ヴィンテージドール
「辛いのではありませんか?あなたは、こちら に目を向けられないでいる。無理もないで す。僕が、あなたをお訪ねすれば、傷つけず にはいられない。迷いました。決して軽々し く判断した訳ではありません」 「お手紙を頂いてましたから。会うのを選んだ の…
「レイス…」 「いつも、私を見つけてくれるのね」 「雨が落ちてきそうだから。僕らの庭園の中に は、雨が美しく見える場所が、いくつかある 幼い頃から、君はここが好きだった」 「ライリー…もう十分に待ったわ、私。返事を 聞かせて」 「あの話か…わかって…
「今晩は、ライリー」 「最高の美女が登場。約束通り、来てくれたん だね、アマンダ。遠い所をすまない」 「隣家だけど。お金持ちは皆、因果な家を持つ のねえ。敷地が広すぎるのよ。 久しぶりだから、道に迷ったわ」 「人の事を、とやかく言えるのかね。君…
「おかえりなさい、ライリー。ずいぶん早いの ね、まだ3時よ」 「アマンダ?久しぶり。今日は調子が悪くてね 逃げ出してきた。君こそ、仕事の鬼が…ここ で何を?平日は、太陽など目にしない人間だ ろう?」 「あなたに話があったので、秘書に電話したら も…
「先日の話の続きを聞かせて下さい」 「ライリー…つまり、過去のあなたとの間に 起こった事は、もう全部、話したわ。十分で しょ」 「全く不十分です。疑問が解消されてません。 あなたは、四年前、ライリーに『青の貴婦 人』を貰った。それなのに、あなたは…
「四年前、私は、ライリーの…つまり、昔の あなたの家を訪ねた。広大な敷地に立つ、大 豪邸だったわ。門から玄関まで、20分は歩い たわね。家も、あまりにも大きいし、幾つも 玄関があって、どのドアを叩いたらいいのか わからなかった。とりあえず、一番近…
「起きて、起きて…えーと、サンディ…だった かしら…起きて」 「…。」 「起きてったら!ねえ…もう…起きてよ」 「うーん…」 「起きなさい!」 「え…はあ…はい!?いきなり、電気をつけなく ても…眩しい…」 「起きて!」 「目が開いたんで、気がついたのですけ…
「このドレスに着替えて、ジニー。 つなぎ姿で、パーティーに潜り込むわけには いかないからね」 「持ってきてくれたんですか?わざわざ…」 「帽子以外は、楽なものだったよ。潰れていな ければ、いいんだけどね。女性の帽子だけは どうにも苦手だ」 「サン…
「ジニー…ジニー!」 「ふあぁ…うーん…」 「良かった、生きてる…ジニー、ジニー、ホラ 起きて起きて」 「うーん…う…ん?あ…れ?」 「もう、さすがに起きなさい。午後1時半を とっくに過ぎてるよ」 「あなたって…あ…遊園地の…え…サンディ!」 「覚えておいて…
「そこの方!どちらに行かれますか!受付は こちらですよ。チケットはお持ちですか?」 「え?あの…」 「このパーティー会場には、チケットが無いと 入れません。購入されましたか?」 「え?そんな…その…」 「チケットがあるか、聞いてるんです!」 「あり…
「これは…一体…えっと…な…何?どうして? どうやって?どうなってるんだい?ちょ… ちょっと…いや…さっぱり…やっぱり…全然、 わからないんだが」 「どの質問から、答えたらいいの?」 「君に任せる…僕は…その…しばらく混乱中だか ら…よろしく」 「これは…恋文…
「な…なんで?どうして…そんな風に思うの?」 「もしかしたら…と思って、言ってみただけだ なんだよ。でも、否定しなかったね」 「別に。何も入ってない」 「今さら遅いよ。さあ、白状したまえ」 「どうして、バレたのかな」 「なぜ、君が、あのクマに執着す…
「出てきたまえ」 「…。」 「茂みに隠れてるおじょうさん。君に言ってい るんだよ。出てきなさい」 「バレちゃった?でも、良かったかも。ここ、 蚊がすごいの。痒くてたまらない」 「それは気の毒に。これを使ってみてごらん」 「何?」 「虫刺されの薬だよ…
「サンディ!やっぱり来てくれたんだね。 あなただけに話があるの。すぐに、私と外に 来て!あそこの公園で話そうよ」 「ちょっと待った、イーヴィ。ダイナさんに、 お礼は?匿ってもらったんだよ、君は」 「ありがと!」 「ちょ…もう行ってしまった。まるで…
「失礼、お嬢さん。 こんな所で、何をしてるの?」 「私は…あっ…」 「ん?」 「私…私に言ってるの?」 「他には誰もいないよね。女の子が一人で、 こんな地域の、薄暗い地下道に座り込んで。 昼間とはいえ、危ないよ」 「あなただって、座ってるじゃない」 …
「大事な話とは何ですか…普通は、そう聞きま すわ、サンディ。なのに、あなたは、ずっと 黙ったままでいらっしゃる」 「そうですね…つい、うっかりしてました。 決して関心が無いわけではないんです。 ただ、この場所の神秘的な美しさに、心打た れていまし…
「もう、すっかり夜ですね」 「そういえば…え…ええ…夜ですわね」 「お宅には、電気は来ていないんですか?」 「え?ええ…何も無いので、たぶん無いかと…危 ないから…だと…思いますわ…」 「確かに、目の玉が飛び出そうな請求書を送り つけてはきますね。危険…
今日は、この美しい島に、バービー・ダイナ さんをお訪ねしました。 「こんにちは。ダイナさんですか?」 「…。」 「勝手にお庭に入ってしまったようで、申し訳 ありません。びっくりなさったでしょう? なにしろ、だだっ広くて、門も塀もないし、 どこまで…
「本日は、バービー・ケリーさんと、 バービー・マリアさんの、トンネル・ アートを見せていただきます。 本当に、楽しみにしていたんですよ」 「じゃあ、ここから入って」 「ここから…。あの、今、気がついたんです けど。懐中電灯を忘れました」 「そんな…
ここ数日、バービー・マリアさんと、 バービー・ケリーさんを捕まえよう と苦心しているんですが、どうにも うまくいきませんね。 彼女達のトンネルには、何しろ沢山 入り口出口があって、どこがどうなって いるのやら…。 「こんにちは」 「ひっ…!びっくり…
本日は、バービー・マリアさんと バービー・ケリーさんのお話をお聞き するはずなんですが… 「こんにちは」 「なんて事だ。どこから現れました?」 「この穴よ。あなたが、後ろを向いている 隙にね。ビックリした?」 「まさか、嘘でしょう。こんな小さな隙…
「バービー・ティファニーさん。 続きをお願いします」 「私達は、普通の恋人達が行く所にも、行き ました。映画、お食事、イベントとかも。 でも、ダメなんです。落ち着かなかった。 大学の中じゃないと、私達はいられない」 「なぜです?」 「なぜでしょう…
バービー・ティファニーさん、 話の続きをお願いします。 「次の日は吹雪でした。風が強くて、雪の花 が美しかったわ。星の様な、きらめく結晶 が、頬や髪に触れました。 私は寒さを避ける為に、キャンパス内にあ る書店に入りました。いくら立ち読みして い…
「本日は、バービー・ティファニーさん に来ていただきました」 「こんにちは、ティファニーです。何を 話せばいいのか、全然、わかりません」 「じゃあ、初恋の話なんて、いかがですか」 「少々、不気味な話になりますけど」 「初恋が?不気味?」 「以外と…