ふれあいママブログ

バービー人形大好きです。魅力を語らせて下さい。エブリスタ(estar.jp)で小説も公開中。ペンネームはmasamiです。大人も子供も楽しめる作品を、特に貧困や格差をテーマに書いてます。

あなたのバービーは何を語る?⑧前編


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「そこの方!どちらに行かれますか!受付は

 こちらですよ。チケットはお持ちですか?」

「え?あの…」

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「このパーティー会場には、チケットが無いと

 入れません。購入されましたか?」

「え?そんな…その…」

「チケットがあるか、聞いてるんです!」

「ありません…けど…知り合いの…その…」

「なんですって?よく聞こえません」

「知り合いに招待されたんです!だから…チ、

 チケットは要らないんです」

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「お知り合いのお名前は?」

「え…と、その…何だったかしら…ちょっと…

 度忘れして…」

「お帰り下さい」

「でも、本当なんです!受付にチケットを置い

 ておくからって、そう言われたんです…本当

 よ、嘘じゃない!」

「お名前は?」

「誰の?」

「あなたのです!いい加減にしないと、警備員

 を呼びますよ」

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「ジニーです。ジニー…」

「リストにありません!確認するまでも無いわ

 安物の靴…見ればわかりますよ!

 とっとと、出ていくんです!ゴード!」

「警備会社の者です。すぐ、回れ右して、出て

 行った方がいいですよ。

『パーティーもぐり』を摘まみ出すのが、僕の

 仕事なんで。嫌な話ですけどね…気の毒には

 思うけど、仕方ないんです。僕も給料が必要

 なんで…」

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「ゴード!何やってるの?ぐずぐず喋ってない 

 で、さっさと、叩き出してちょうだい!」

「チッ、うるさいな…」

「何!?」

「いや、何でもないです」

「あんたの替わりなんて、いくらもいるのよ?

 なんなら、その『もぐり』と一緒に出ていっ

 てもいいわ!」

「聞いたでしょう、あれ。僕がクビになる。

 あなたが出ていってくれなきゃ、僕が家賃を

 払えなくなります。まいったな…無理矢理に

 引っ張っていくなんて出来ませんよ、僕。

 もう行った方がいいです、本当に。頼みます

 よ…ね?お願いしますよ」

「足が…足が動かない…」

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「は?大丈夫ですか?僕、何もしてませんよ。 

 痛めたんですか?」

「いえ…大丈夫…です。ごめんなさい、もう行き

 ます。あなたに迷惑かける気は無かったの」

「いいんです。気にしないですから、僕」

「あなたをクビに…だなんて、そんなつもりは

 なかったのよ…」

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「本当に、大丈夫ですか?」

「ゴード!何してるのよ?」

「具合が悪いらしくて…もう少し…待っ…」

「さっさと摘まみ出して!お客様で混み合う前

 に!まともな上流の方々に、こんな醜態を

 お見せするわけにはいかないわ!」

「醜態はあんたじゃないか…」

「な…何か…今…言った…!?」

「いや、その…」

「ごめんなさい…もう…行きますから…」

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「やあ、ゴード!久しぶりだね…て、修羅場?

 どうしたんだい、大騒ぎだね」

「サンディ!会えて嬉しいなあ!もっと頻繁に

 会いたいですよ。腰の具合は?」

「相変わらず、痛いね」

東洋医学とやらが、いいらしいですよ。

 針治療とか、どうです?」

「針を刺すのかい?怖いな」

「効くって話ですよ」

「君は、はち切れんばかりに元気そうだね」

「体が全てですからね、僕は。4つも掛け持ち

 で仕事してるし、医者なんか贅沢品だし。

 薬だって、高いですよ」

「君は大したもんだよ。僕は本当に、いつも

 感心してる。

 ところで、こちらのお嬢さん…ジニーさん…

 だけどね。僕と一緒なんだ。ここで待ち合わ

 せしていてね。チケットも渡しておいたんだ

 けど、なくしたのかな?ジニー?」

「え?は?あの…その…」

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「と、いう訳なんだよ、ゴード。なんなら、

 チケット、買おうか」

「とんでもない!サンディにチケットなんか

 買わせたら、主催者に殴られますって。

 ごめんなさい、お嬢さん。ジニーさんでした

 か。サンディのお連れ様だとは、知らなかっ

 たんで。お詫びします」

「いえ…とんでもない…あなたのせいでは…。

 あなたはご親切でしたわ…」

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「じゃあ、行こうか、ジニー。また今度、ゆっ

 くりね、ゴード」

「主催者の…カミツキガメ婦人が、あなたの事

 鵜の目鷹の目で探してますよ。サンディ、

 来てくれるかしら…て、ピリピリしちゃあ、

 花屋を怒鳴りつけるわ、ケータラーは苛める

 わで、もう六人ばかりも、ウェイトレスが

 泣いて辞めちゃいましたよ。

 どうするんですか?」

「会場は広い。逃げ切るさ」

「僕ら従業員の、平和とチップの為に、犠牲に

 なって下さい」

「いくら君の為でも、夫人をご機嫌にさせるの

 は至難の技だ」

「サンディなら、できますって。傍にいれば

 それでいいんです」

「他人事だと思って…僕は隠れるよ」

「来月、また野球に行きませんか?この前は、

 本当に楽しかった!」

「ああ、行こうね」

「電話します。パーティーを楽しんで!」f:id:fureaimama:20210731155242j:image

「さて。初めまして。僕はサンディ。君は

 ジニー…と言っていたね。何の略称なの

 かな?本名は?」

「ジネヴラ」


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「ジネヴラ…美しい名前だね」

「今は、何も素晴らしいとは思えないんです」

「君は初心者のようだ。そりゃ失敗もするよ。

 落ち込んじゃいけない」

「確かに落ち込んでますけど…初心者って…?」f:id:fureaimama:20210809001058j:image

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「チケットを購入せずにパーティーに参加する

 いわゆる『パーティーもぐり』のさ。

 あんなやり方じゃダメだよ。嘘が下手だね」

「私、何をやらせてもダメな人間で…。もう、

 どうしようもないんです」

「最初から、うまくはいかないよ」

「連れだなんて…嘘ついてくれて、ありがとう

 ございます。でも、どうして助けてくれたん

 ですか」

「仕事上、必要だから仕方なく出席したけれど

 ここのパーティーは嫌いでね。つまり、僕に

 とっても、今日は、ついてない日という訳。

 助け合おうよ。シャンパンはどうかな?君は

 未成年?」

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「二十歳は過ぎてますけど…」

「じゃあ、無事にパーティーに潜り込めた事を

 祝して、乾杯しよう…隠れて!」

「え?」

「そのカーテンと柱の陰に、早く、早く」

「え…?」

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「しーっ」

「…」

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「もう、大丈夫。出てきて息をしてもいいよ。

 あやうく見つかる所だった」

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「まずい!また、戻ってきた。彫像の陰に…。

 早く隠れるんだ」

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「あなたは『パーティーもぐり』じゃないんで

 ですよね…正規の招待客なのに…その…隠れ

 てるんですか?」

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「僕は、フリージャーナリストで、色々な人に

 会って、話を聞くのが仕事なんだ。

 だから、パーティーに出るのも、大事な事で

 それで、ここにいるんだよ。

 でもねえ…失礼ながら、主催者の、サッシャ 

 バックリー夫人にはね。まあ…何というか、

 見つかりたくないんだ。いや、いずれは挨拶

 しなくちゃいけないんだろうけど…出来る

 限り遅い方がいい。数百人もの招待客で溢れ

 てからなら、夫人も忙しくて、僕にくっつい

 たまま…というワケにもいかなくなるから」

「その人の事…嫌いなんですか?」

「好きではないな」

「どうして?」

「さっきの受付での大騒ぎ…あんな事を起こす

 からだよ。始終、誰かを泣かせてる」

「でも…私がいけないんですもの…上流階級の

 パーティーなんですよね…私は…下層の階級

 ですし、招待もされてないんですから…」

「僕だってそうだよ。貧乏ジャーナリストで、

 それ以上でも以下でもない。上流紳士なんか

 じゃないけれど、もし、そうだとしても、

 こんなパーティーは開かないなあ。誰であろ

 うと、人を追い返すようなパーティーはね」

「追い返される方が、いけないんです…」

「そうかな…」

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「あそこのテーブルに座る?彫像の陰になるし

 見つからないかもしれない」

「はあ…」

「じゃあ、改めて、何を飲む?シャンパン?

 レモネード?」

「実はあの…お酒はダメなんです…お腹が空いて

 その…空っぽなんで…出来れば、その、なんか

 食べてからが…」

「そうなんだ。気がつかなくてごめんね。 

 バイキング形式だから、好きな物を取ってお 

 いで。悪いけど、僕の分もお願いできるかな

 隠れていたいから。助けてくれる?」

「あの、あの、長いテーブルの上、全部、料理

 なんですね…すごい…食べ物の山だわ…。私、

 食べていいんですか?主催者に見つかったら

 マズイのは、私だって同じです。叩き出され

 るかもしれないし…」

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「本当に、僕達は、妙な状況になってるね。

 でも、僕達のせいではないよ。パーティー

 方がおかしいんだ。見つかったら、仕方がな

 いからね。僕と一緒だと言えばいいよ。

 大丈夫。安心して、何でも取っておいで」

「ありがとうございます…行ってきます」f:id:fureaimama:20210809001311j:image
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「お腹は落ち着いた?」

「ええ…まあ…」

「でも、思っていたより、食べなかったね。

 腹ペコに見えたけど…足りたの?」

「胃が…縮んでしまったみたいで…あまり入らな

 くて…」

「そうか…後で、またトライしてみるといい。

 ところで、どうして、『パーティーもぐり』

 なんて、しようとしたの?」

「え?」


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「スリルがあるから、とか、面白いからとか、

 そんな理由だとは思えなくてね」

「理由なんかありません…たまたま、この

 ホテルの前を通りかかったら、いい匂いがし

 て…調理場から、それは美味しそうな…

 だから、覗いてみたら、パーティーの案内板

 が立っていたから…フラフラッと…それだけ

 なんです。チケット制だなんて、知らなかっ

 たんです。法律違反する気なんて。

 だから、その…あの…それだけなんです」

「法律まで持ち出す事はないよ。僕だって、

 駆け出しの頃は、こうしたパーティーに押し

 駆けては、放り出されたものだよ」

「惨めじゃなかったですか…恥ずかしい…とか」

「いや。一度も、そんな風に思った事はない」f:id:fureaimama:20210731160344j:image

「私は惨めでした…情けないし…」

「正しいやり方を知らないからだよ。

 よし!僕が正式な『もぐり方』を教えてあげ

 よう。今週の金曜日、空いてる?」


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「いえ…あの…もう、いいんです。二度と

 『パーティーもぐり』なんてしません。

 しませんから、もう…その…いいんです」

「まずい。夫人がこっちに来そうだ。今度こそ

 捕まってしまう。ジニー、何とか誤魔化して

 くれない?」

「無理です…あの…無理、私には…どうしたら

 いいのか、わかりません…」

「…夫人に捕まってしまったら、ミイラか化石

 になるまで、離してもらえないよ…」

「だからって…そんな…何と言えばいいのか、

 わからないんです」

「仕方ない。逃げよう」

「お仕事でいらしたのに」

「そうだけど、僕の仕事は、臨機応変なんだ。

 大丈夫。君は残ってもいいんだよ」

「一緒に行きます…ごちそうさまでした」

「お礼はいらないよ。僕が用意したんじゃない

 からね」

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「ジニー、あっちを見てごらん。綺麗な景色

 だね」

「ええ…そうですね」
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「川向こうに、観覧車が見える?小さな遊園地

 があるんだ。一緒に行かない?」

「いいえ…その…私、その…お金を持ってきてな

 いので…いいです」

「僕が払うから。あの遊園地は、さほど高くな

 いんだ。楽しいよ。君に必要なものだ」

「いえ、別に…必要ないですよ。もう…これで

 失礼します…」
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「ジニー。君は、パーティーで嫌な思いをした

 し、僕みたいな変なヤツに出会うし、まだ、

 お腹は空いたままだし、このまま家に帰って

 も、モヤモヤするよ、きっと」

「もう、ずいぶん長い間…遊園地なんて来てま

 せん…」

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「じゃあ、ぜひ、ご招待したいな。パーティー

 より、あちらに。気取った人も、君を見張る

 人もいないよ。

 ジェットコースターに乗って、ゲームで景品  

 を取って、ホットドッグにかき氷をごちそう

 するよ。それなら、きっと美味しく食べられ

 るから。ね?いかがですか?」

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「え…ええ…本当は、すごく行きたいです…。

 実は…遊園地なんて…生まれて初めてなんで

 す」

「それは、とても良くない事だ。

 そんな事があっては、いけないんだよ。

 誰だって、一度は遊園地に行かなくちゃ。

 元気を出して、ジニー。きっと何もかも、

 うまくいく日がくるからね」

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「サンディじゃない?!キャーッ、素敵」

「リン!それにサマーじゃないか。

 こんな所で会うなんて、驚いたよ」

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「バックリー夫人のパーティーに呼ばれてたん

 だけど、やめたの。退屈そのものだもの。

 こっちの方が楽しいわ」

「僕も、そのクチだよ。こちらは、ジニー。

 パーティーで会ったんだ」

「ハーイ、ジニー!よろしくね。サンディの

 友達は、私達の友達よ!」

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「は…初めまして…あの…」

「私達、これからサマーのパパのヨットで、

 花火大会をするの。二人とも、一緒にどう?

 サンディを一人占めはダメよ、ジニー!」

「す…すみません…あの…私…失礼を…」

「リン。悪いんだけど、今日はジニーと二人で

 遊ぶ約束なんだ。わかるよね?」

「…。」

「頼むから…ね?リン、お願いだよ」

「そっか…わかったわ、サンディ」

「ありがとう、リン」

「その代わり、今度、絶対に会ってよね!

 わかった?いいわね?」

「ああ…わかってるよ。約束するから」

「…じゃあね。私達、もう行くわ。またね、

 ジニー。

 サンディ!約束を破ったら殺すわよ」

「破らないよ」

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「騒がしかったね。びっくりさせて、ごめんよ

 ジニー。今度こそ、楽しく遊ぼうね。

 ただし、その前に、一つだけ。

 金曜日の午後2時。グリーンパークの東端、

 ブランコの横で待ち合わせだよ。

 来るのも来ないのも、まあ、君の自由だが。

 正式な『もぐり方』を、教えてあげる」

「…」

「難しい話は、ここまで。さあ、ジニー。

 まずは、ジェットコースターに行こう」

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中編に続きます。

 

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ペンネームはmasamiです。

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