ふれあいママブログ

バービー人形大好きです。魅力を語らせて下さい。エブリスタ(estar.jp)で小説も公開中。ペンネームはmasamiです。大人も子供も楽しめる作品を、特に貧困や格差をテーマに書いてます。

あなたのバービーは何を語る?⑦後編


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「これは…一体…えっと…な…何?どうして?

 どうやって?どうなってるんだい?ちょ…

 ちょっと…いや…さっぱり…やっぱり…全然、 

 わからないんだが」

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「どの質問から、答えたらいいの?」

「君に任せる…僕は…その…しばらく混乱中だか

 ら…よろしく」

「これは…恋文。ラブレターとも言うけど」

「僕宛てになってるよ」

「私ね、カントリーフェアで、あの日…初めて

 サンディを見たの。その時はもちろん、名前

 も何も、知らなかったけど…会場にいる間も

 その後もずっと、ずーっと、目が離せなかっ

 たんだよ。

 こんなにハンサムな人、この世にいるんだっ

 て…そう思った!すっごくビックリした!

 背も高いし、スラリと引き締まってて、全身

 丸ごと魅力的だけど…やっぱりね、顔がね。

 ねえ、サンディって…もーう、本当に素敵な

 顔してるよね。超カッコいい。なんかこう、

 古風なさ…甘やかなマスクで…完璧。理想」f:id:fureaimama:20210713112732j:image

「そうかな…自分の顔って、よくわからない

 からね」

「すぐに走って行って、飛びついて、それで、  

 好きです!付き合って下さい!とか…定番の

 告白しようと思ったんだけど、すんでの所で

 思いとどまったんだ。いやいや、メアリー。

 相手の事をもっと知らなくちゃいけない。

 仕事とか、性格とか、ライフスタイルとか。

 まず調べなくちゃいけないぞって」

「それは賢明な判断だね」

「それで、サンディを尾行して…まあ、ご存知

 の通り、一週間、つけまわしたの」

「それは賢明ではないな。

 それから、部屋の不法侵入も良くはない」

「あちこち引っ掻き回したおかげで、フリー・ 

 ジャーナリストだってわかったんだよ。

 あー!やっぱりカッコいいね、サンディ!」f:id:fureaimama:20210713112816j:image

「大好きな仕事だけど、どうかな…カッコいい

 かは…」

「え?仕事の事じゃないよ。今さ、木漏れ日が

 当たってさ、眩しくって、サンディ、顔を

 しかめた。それがカッコいいの」

「顔の事ばっかり言うんだね、メアリー」

「そうだよ。いけない?だって好きなんだもの

 サンディの顔が、大好きなんだもん!」

「そこまではっきり言われると…なんだかね。

 怒れないね。正直…嬉しいな」

「だけど、調査の結果には、絶望しちゃった。 

 サンディ、メチャクチャ知り合いが多いし、

 それは、もちろん良い事だけど…女の友達

 は良くない。ものすごい美人ばっか」

「君だって、素晴らしく美しいよ」

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「そうだよ。だからマズイの、マズイんだっ

 てば。他の子と、代わり映えしないって事

 じゃない。告白したって、絶対、付き合って 

 くれないだろうって、そう思ったんだ」

「それは正しい。僕は、誰とも恋人にはならな

 い。いや、なれないんだ」

「わかってる。すぐに、まあ、なんとなくね、

 わかった。理由は知らないし、聞き出そうと 

 かも思わないよ。何がどうだって、サンディ

 はサンディで、カッコいい事にかわりないん

 だもん。だけど…。

 一週間でも…いや、1ヶ月…やっぱり一年…

 できれば、ずっと…なんなら…」

「メアリー?大丈夫?」

「少しでもいいから、ちょっとの間でいいから

 デートっぽい事がしたかったの。

 アイスクリーム食べたり、プールで泳いだり

 散歩したり…ピクニックしたり…サンディと

 一緒に過ごしたかったの。普通に…楽しく」f:id:fureaimama:20210713112917j:image

「その為に?わざわざ、こんなに手の込んだ事

 をしたのかい?僕と一緒にいたいから?」

「うん、そう」

「…」

「サンディ?」

「あ…ごめん、ごめん。えっと…。

 そう、その…でも、わからないんだ。

 どうやって、クマのお腹に手紙を入れたの?

 タヌキから取り返したのは、いつ?」

「本当に、わからないの?簡単なのに」

「教えて欲しいな。降参するから」

「同じクマがね、実は二つあったんだよ。

 サンディがフェアで貰って、女の子にあげた 

 クマ1号には、何も入ってなかったの。ただ

 の景品。私の物だっていうのはウソ。女の子

 にプレゼントしているのも見てたよ。それで

 計画を思いついたの。

 クマ1号を探す名目で、サンディと毎日、

 会えたら、それで満足だった。実際には

 見つからなくても、どうでも良かった。

 タヌキの手に渡ったのは計算外だったけど、

 でも、登山や、ピクニックが出来たから、

 結果オーライかな。タヌキが盗んだクマ1号

 は、今でも、この山のどこかにいるよ」

「もう一つのクマは?二号かな。どうして現れ

 たの?」

「同じ物を、私が買ったから。サンディも言っ

 てたよね? ショッピングセンターには、同

 じクマが、山のように置いてあるって。

 一つを手に入れて、お腹の中に手紙を埋め

 込んでから、さっきの、あの崖に引っ掛けて

 おいたの。2号は、1号のフリをして、いずれ 

 は、発見されなきゃいけないんだもの。

 サンディに、ラブレターを渡せないからね。

 ただねえ。サンディに怪しまれなきゃいけ

 ないのがね、難しかったな。クマの中身を知

 りたくなるように、もっていかなきゃならな

 かったから。

 ねえ、何でそんな顔するの?」

「え?」

「笑いを噛み殺してるみたいな顔」

「笑いを噛み殺してるからだよ。見事に騙され

 たんだからね。愉快だよ。だけどね、僕は君

 とは、恋人になれないんだ。君のせいじゃ

 ない。僕には…僕には…長い未来が無いんだ。

 過去も無い。君が思うより、傷を負っている

 人間なんだよ」

「関係ないよ!私には、今のサンディしか見え

 ないもん!恋人じゃなくたっていいんだって

 ば!そうでしょ!人間関係って、恋愛だけ

 じゃないよ?お互いに好きでさ、一緒に

 いて楽しいなら、普通に遊びに行ったりして

 もいいはずだよ!友達とか、親戚のお兄さん

 みたいな感覚で、ね?いいでしょ?ね?」

「…君は、素晴らしい子だ。いつだって、

 一生懸命で」

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「じゃ、いい?」

「ダメだと言うべきなんだろう。君の為と

 いうより、僕自身の為にね。君がいつか…

 本当の恋をして、恋人が出来て、離れていっ

 たら、きっと淋しいだろうから…。

 でも、言えないんだ。

 君といると、幸せなんだよ」

「じゃ、いいじゃない。ねえ、今週末も遊ぼう

 よ。なんか、面白いイベントない?」

「そうだ…これなんかどうかな?確か、出かけ

 に、ポストから出して…ああ、これだ」

「招待状?すっごーい!金ぴかだね。ガーデン

 パーティーって何?ポロって?」

「馬に乗って、スティックでボールを打ち合う

 ゲームだ。試合を見ながら、芝生の上で

 ピクニックをする…まあ、そんなパーティー

 だね。興味も無いパーティーに、やたら招待

 されるもんだ。でも、君となら楽しいかも

 しれない」

「行きたい!行きたい!」

「じゃあ、その招待状をご両親に見せて、許可

 をもらうんだよ。歴史があるパーティーだか

 ら、あまり心配されないだろう。当日は車で

 迎えに行って、僕がご両親に挨拶しようね」

「サンディ、車なんか無いじゃない」

「送迎車が来てくれるんだ」

「送迎バスじゃなく?すごーい!友達に自慢

 しよう。学校中に言い触らそうっと」

「やめてくれ、頼むから。すぐにドレスを届け

 させるからね」

「高価いの?うち、お金持ちじゃないよ」

「タダだよ。でも、条件がある。パーティー

 誰かにドレスの話を振られたら、ダイナの店

 で作ったと、宣伝してくれ」

「ダイナって?誰?」

「ドレス・デザイナーを目指す友人だ。とても

 大事な人なんだよ。有名なパーティーで、君

 のような、美しい人にドレスを着てもらうの

 が、一番の宣伝になるからね」

「サンディって、気張らないジャーナリストで

 無類のお人好しに見えるけど、そうじゃない

 んだね」

「嫌いになった?」

「すっごく好き!」

「僕も君が大好きだよ。さ、もうお帰り」

「ママに、爪磨いてもらわなきゃ。パーティー

 なんて、ゴージャスな大人のパーティーなん 

 て初めて!ヒヒーヒヒヒ」

「恐いよ」

「じゃね!バイバイ!」

「あっ…ちょっと待って、メアリー」

「なあに?」

「君は、なぜ泣いたんだい?ピクニックの時」

「だって…だって…もう、いいよ」

「聞かせて欲しいんだ、どうしても」

「まどろんでいるサンディを見てて…あんまり

 素敵で…大好きって思って…そうしたら、

 なんか涙が出てきた」

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「…そ…そうか…。じゃ、じゃあ、また、週末に

 ね」

「うん!私、頑張って、うんと綺麗になってく

 ね、サンディ。」

「メアリー。これは本気だよ」

「何が?」

「パーティー会場がどれだけ広く、どれだけ

 沢山の貴婦人が来ようとも、誰一人、君に

 かなうものか」

「キャーッ、サンディ!ここで、ちょっとキス

 してみない?」

「…ダメだ。さあ、お帰り」

「ケチなの。週末まで、ずっと膨れっ面してて

 やるから。それで、パーティーでは、うんと

 楽しく過ごすんだ!バイバイ!」

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当日…。

「実に美しいね、メアリー。素晴らしい」


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「サンディも!ひーっ!カッコいい!その格好

 なんて呼ぶの?」

「これかい?フロックというんだ」

「素敵…でも、ちょっと頭にきた」

「何が?」

「サンディは、私の人だよ。なのに、なんで、

 パパとママが、サンディにべったりになっ

 ちゃうの?」

「君のご両親は、とてもいい方達だね。さあ、

 車にお乗り」

「キャー!この車、すごい長い!リムジンとか

 いうの?ねえ、そうなの?」

「そうだね」

「待って待って!写真を撮らせて!友達全員と

 いじめっ子に送りつけるから」

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「やめてくれ」

「嫌だ…どうしよう!どうしたらいい?すごく

 緊張してきちゃったよ!ど、ど、ど、どうし 

 よう…」

「え?今?突然すぎやしない?」

「だって、上流の人ばっかり集まるパーティー

 なんでしょ?私、マナーなんて、何一つわか

 らないよ!嫌だよ、恐い。どうしよう…

 マナー教えて!」

「そんな必要ないよ」

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「バカにされちゃう」

「君が逆立ちしながら、鼻からお茶を啜った

 所で、地球が壊れる訳じゃない。ただの、

 気取ったパーティーに過ぎないんだよ」

「そんなの、わかってるよ!私が心配してるの

 は、サンディに恥をかかせちゃう事だよ。

 サンディが、私を恥ずかしく思う事だよ」

「…」

「サンディ?」
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「君は、本当に、僕が好きなのかい?」

「大好き」

「僕を素敵だと思ってるの?」

「もちろんだよ。だからこそ…」

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「ならば、さっきの言葉は、取り消してもらい

 たい。自分がエスコートしている女性が何を

 しようと…恥ずかしいと思うような、僕が

 そんな人間だと考えるなら、それは、僕に

 対する侮辱だよ」

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「そうだよね…サンディはそんな人じゃないよ

 ね。ごめんね、サンディ」

「ありのままの君が大好きだから、一緒にいた

 いんだよ。これからも、色々、遊びに行こう

 ね、メアリー」

「うん!」

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「もう行くかね、サンディ」

「お待たせしてます、ワレンさん。ああ、こち

 らは、運転してくれるワレンさん。彼女は

 メアリーです」

「初めまして、こんにちは!ワレンさん、少し

 だけ待ってて貰っていいでしょ?どうしても

 写真が欲しいんだもの」

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「わしが撮ってやろう」

「ありがとう!」

「勘弁して下さいよ…」

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「何十枚、撮る気なんだ、メアリー。

 早く乗りたまえ」

「お待たせ!キャー!この車、普通の中身じゃ

 ないんだね。すごーい、シャンパンが置いて

 あるよ、ピンクだよ、サンディ。飲んでいい

 よね?」

「ダメだ。君はジュースだよ、メアリー。とこ

 ろで、ワレンさん。今、スコアはどれくらい

 でしたかね?」

「35対17で、あんたは負け越し中」

「くっ…いつまでも負けてはいませんよ」

「なんの話?」

「僕とワレンさんは、釣り仲間なんだ。毎回、

 魚の数で勝負してる。重さでは、僕が勝って

 いるんだよ、メアリー」

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「嘘はいかんな、サンディ」

「ワレンさんって、釣りがうまいの?」

「名人だよ。だから、負けても恥ずかしくない

 はずだ」

「じゃあ、わたくし、勝負を申し込みますこと

 よ、ワレンさん。このメアリー、釣りなら誰

 にも負けませんですますの、ホホホ」

「え?そうなの?」

「あなたは、記録係でもやっていなさいな、

 サンディ」


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「よーし。受けて立とう。本物の勝負をしたい

 と思っていたのでな」

「手加減しないよ、ワレンさん!」

「…本当に、良いお嬢さんだな、サンディ」

「僕もそう思います」

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次回は、バービー・ジニーさんのお話です。

お楽しみに。

 

エブリスタで、小説も公開中。

ペンネームはmasamiです。

覗いてみて下さい。