ふれあいママブログ

バービー人形大好きです。魅力を語らせて下さい。エブリスタ(estar.jp)で小説も公開中。ペンネームはmasamiです。大人も子供も楽しめる作品を、特に貧困や格差をテーマに書いてます。

あなたのバービーは何を語る?⑩ライリー編その3

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「レイス…」

「いつも、私を見つけてくれるのね」

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「雨が落ちてきそうだから。僕らの庭園の中に

 は、雨が美しく見える場所が、いくつかある

 幼い頃から、君はここが好きだった」

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「ライリー…もう十分に待ったわ、私。返事を

 聞かせて」

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「あの話か…わかってる、わかっているんだ、

 レイス。君が、どれほど真剣か…軽々しくは

 扱えない問題だという事も。僕は…考えてみ 

 た…自分と向き合おうとしてみた。難しいね

 とても難しい。今まで、したことがなかった

 今も出来ているのか自信がない」

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「辛かった?」

「とてもね…ああ、すごく苦しいよ、今、この 

 瞬間も」

「わかるわ…でも、いつかは向き合わなくては

 ならないのよ、ライリー」

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「僕の人生に、ここまで踏み込む事は、誰に 

 も許さない。唯一、君だけなんだよ、それが

 出来るのは。僕に、そこまで親しく触れられ

 るのは、君だけだ。この世で、ただ一人、

 それが出来る人…」

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「アマンダもいるわ。あなたの力になろうと

 している。彼女は、本物の友達よ」

「確かに、彼女は、理解してくれる。僕の事を 

 僕以上に。それでも、僕は…僕の中に踏み

 込む事を許さない」

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「ライリー…私を愛してる?」

「ああ…レイス…愛してるよ。いつも変わりなく

 心の底から…10歳の、まだ幼い少年の日に、

 君を見て、その瞬間から…愛し始めたその日

 から、ずっと今も限りなく愛している。

 それでも…僕は行かないんだ、レイス」

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「なぜなの…私にはわからない…あなたは、ここ

 で幸せじゃない。私も幸せじゃない。一緒に

 逃げて、そうしたら…そうしたら…」

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「ダメだ、レイス。僕にはわかっている。

 ここから逃げたら…この人生を変えれば…

 僕らの結びつきも消える。僕らは別れ、他人

 同士になるだろう。必要としないからだ。

 僕の人生はね、レイス、すでに終わっている

 のだよ。

 悲しいが、わかって欲しい。受け入れて 

 欲しいのだ。君のせいではないし、誰のせい

 でもない。ただ、もう終わりなのだ」

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「嫌よ…諦めるには早すぎるわ。あなたは、

 まだ、26の若さなのよ」

「年齢は関係ない。人生は、与えられたものさ

 レイス。自分で変えられる部分は、本当に

 僅かだ。

 君が僕を置いていなくなれば、僕はここでの

 人生に、その非道さに耐えられなくなる。

 でも、君を留めて、このままの人生を続けれ

 ば、僕も君も、異常な結びつきに耐えられな

 くなるだろう。いずれ、必ず」

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「私は、もう限界なのよ、ライリー」

「君を苦しめるのは、耐えられない。

 なんとかしなくては、いけないんだ。

 だが、君と二人で、一緒にここから逃げ出

 したら、僕は…僕は…」

「はっきり言ってちょうだい」

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「人生の苦しみからは逃れられるだろうが、

 代わりに、君を愛さなくなるだろう。

 君が必要でなくなるからだ。僕は、そこまで

 ひどく君を利用した…。

 でも、知らなかったんだ。信じて、レイス。  

 自分が、君に、酷い仕打ちをしている事に、

 気付かなかった。

 これまで、僕の全てだった君が、どうでも

 よい他人になる。それも恐ろしい…」

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「だから、君と一緒には、逃げられない。

 僕は、ひどい事を言っているね、レイス。

 大富豪?青年社長?僕は塵芥と一緒だ。どう

 にもならないんだ、もう」

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「あなたの人生を、それほど苦しいものにして

 いるその訳を、私に話して、ライリー」

「無理だ」

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「話せないのね…」

「君には話せない。知らないでいて欲しいんだ

 君には、僕の現実を知られたくない」

「あなたは、そうかもしれない。私は違うわ!   

 どこでも、どんな場所の、どんな生活でも

 あなたを愛せる。大好き、大好きなのよ、

 ライリー…どんなあなたでも…私の気持ちを、

 なぜ、信じてくれないの?」

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「それは誤解だ、レイス。君は、どんな僕でも

 受け入れてくれるだろう。君を信じてるよ。

 僕が、耐えられないのだ。

 君の前でだけは、普通の人でいたい。普通の

 優しい人でいられる…それは癒しだ。

 思えば僕は、ただひたすら、普通の人でいた 

 かったんだ。ずっと、そう願っていた。叶わ

 ない夢なのだけれど、君の前だけでは、夢の 

 世界にいられたんだね…」

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「私の苦痛がわかる、ライリー。私の苦しみが

 わかる?」

「わかっていないと思う。レイス…すまない」

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「ここでの生活の苦しみ…あなたのそれとは

 違うけれど、教えてあげるわ、ライリー。

 羽毛にくるまれた様に大事にされて、宝物の

 様に大切に扱われて…何でも、好きな物を

 好きなだけ、際限なく与えられて、誰もが

 夢見る生活…でも、誰だって、きっと耐えら

 れないだろうと思うわ。それは辛すぎる生活

 でもあるのよ」

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「考えてもみて、ライリー。

 すごくハンサムで、素晴らしく優しくて、

 本当に素敵な…若い…自分とそうは違わない

 若さの男性が…いつも傍にいて、限りなく

 慈しんでくれて、それで…それで…優しく

 触れてくれて…でも、それは、宝石に触れて

 いるのと同じなの。でなきゃ、コレクターズ

 アイテム?

 私は、生身の人間なのよ。夢の世界の人形

 ではないの。現実の女性として愛して欲しい

 のに…そういう思いで触れて欲しいのに、

 叶わない。この辛さがわかる?」

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「僕には、生身の人間は必要ない」

「自分が、愛している男性が、心底、不幸なの

 も…辛いわ」

「僕は、君をも不幸にしていた。絶対に幸せに

 すると…毎日、ただひたすら、君を想ってい

 たのに。

 そんな資格がなかったんだね。自分ですら、

 幸せに出来ないのだから」
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「ライリー…私を抱いて…抱いてよ。体で、愛を  

 結びたいの、私は」

「無理だ。僕には出来ない」

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「体で紡ぐ愛は、恥ずかしい事ではないのよ、

 ライリー。汚い事でもないわ。

 現実の愛。体温を感じ、生きている事を感じ

 られる愛なのよ。勇気を出して…ライリー。

 私と、体で愛を奏でれば、きっと人生を取り

 戻せるわ」 

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「やめてくれ、レイス。僕はもう、希望を持つ

 事に疲れた…生きるのに疲れた。

 君には酷い仕打ちをしたけれど、君といる時 

 だけ、僕は幸せだった。どうか、これだけは 

 信じて欲しい…僕は自分に出来る、精一杯の

 事をしたんだ…

 大した事は出来なかったけれど、それでも、

 精一杯に頑張ったんだよ」

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「知ってるわ…。

 それで?これは何なの?」

「プレゼントだけど…いや、わかってるよ、

 レイス。嫌なんだよね。貰いたくない。

 それが、わからないほど、馬鹿ではない

 つもりだ」 

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「だったら、なぜ?」

「わからない…いわば、習慣なんだ。買って

 帰らないと、落ち着かなくて…」

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「あなたなんか、大嫌い!」

「レイス…」

「大嫌い、大嫌い!一人にして!」

「レイス!」

「…」

「…」

「ごめんなさい…取り乱して。

 しばらく、一人で過ごすわ。

 考えたいの。私、とても傷ついた。それに

 疲れた…。お願いよ、ライリー。お願い!

 絶対について来ないで!」

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「レイシー…どうしたの?あなた、大丈夫?」

「アマンダ…来てくれて、ありがとう。

 どうしても、聞きたい事があって。

 それは…」

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「言わなくても、わかっているわ。いつか、

 あなたが、聞きに来ると知っていたし、

 あなたになら、話したいとも思っていた。

 本当に、いいの?恐ろしい話なのよ」

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「知らないではいられないわ。ライリー…私が

 16年も共に暮らしてきた人…愛してきた人…

 ねえ、彼は…彼は…一体、何者なの?」

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「中規模の製薬会社の社長よ。代々、血族経営

 の」

「表向きを聞いているのじゃないわ!私、

 怒っているのよ、アマンダ。もう、嘘は沢山

 よ!あなたも、ライリーも、マグダラも、嘘

 ばっかり、最低よ!私は…」

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「ライリーの一族はね…究極のマッチポンプ

 世界を操っているの。致死性のウイルスや

 細菌を作り上げ、選び抜いた場所に広めて、

 時期をみて、ワクチンや薬を投下する」

「バカな事、言わないで。本当に、そんな事を 

 していたら、世界でも有数の、巨大製薬会社

 になってるはずでしょ」

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「あなた、変わった考え方する子ね。

 儲けるのが目的ではないわ。操るのが目的な

 のよ。目立たない存在を装わないとね。

 世界を動かすには、巨大なマネーだけでは

 不十分なの。恐怖、パニック、階級格差

 ヘクトクライム、戦争…様々な姿に偽装した

 グループが、世界を動かしている。

 ライリーは、病気と、その恐怖で操る。

 奇跡の薬や、ワクチン、空虚な希望や、生へ

 の執着でも、大衆は操れる。

 まあね、担当業務ってワケ」

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「なぜ…そんな事をするの?」

「ずっと昔の昔から、ライリーの一族の担当と

 決まっているからよ。はっきりは知らない

 けれど、もしかしたら、人々が、まだ洞窟に

 に暮らしていた時代に遡るかもね。

 何が目的なのかなんて、わからなくなってる

 の。あえて言うなら、操るのが、人間の性…

 負った本能だからかしら。誰かがしないでは

 いられないのよ」

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「あなた達は、支配者なの?」

「違う。

 私の一族も、ライルの一族も、操るだけで

 はなくて、誰かに操られている駒でもあるの

 よ、多分…。

 けれど、指し手が巨大すぎて見えないし、 

 知ろうとするのは危険だわ。

 だから、いわばムードで動いてる」

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「ムードですって?」

「血族の感覚…受け継いできた伝統ね」

「あなたの一族の役割は?」

「ライルの一族とは、切っても切れない仲。

 お役人と政治家の一族よ」

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「ライリーは、苦しんでいるわ」

「稀に…本当に稀に…彼の様な人がいる。

 完璧に操られ、縛り付けられ、洗脳されて

 いるはずなのに、それを弾いてしまう人。

 自分に疑問を持ったり、苦しんだり…

 一族の中の腐ったリンゴよ」

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「腐ったリンゴは、どう取り除くの?」

「手を出す必要は無いわ。自滅するのを待てば

 いい」

「あなたも、腐ったリンゴよ、アマンダ」

「私は違う!なぜ、そんな事を言うの!」

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「ライリーの為に泣いてるからよ。彼を想って

 涙を流している。彼を愛しているから…だわ

 あなたも、腐ったリンゴなのよ」

「…」

「…」

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「ライルを助けたい…でも、どうしていいのか

 わからない…わからないのよ、レイシー」

「私は家出するわ」

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「レイシー…それは、無理だわ。ライルは、

 あなたに中毒してるのよ。

 頭では、そうすべきでないと理解していても 

 それでも、あなたを追い求めるわ。 

 世界中の警官や探偵を使ってでも、あなたを  

 探し出そうとする。

 これは、比喩ではないのよ。

 彼には、それだけの財力と権力があるの」

「大丈夫よ」

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「ライルに死ねと言うの?あなたを失えば、彼

 は生きていけないのよ」

「大丈夫よ」

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「どういう事?何を考えているの?」

「しばらく、あなたの家に匿って、アマンダ。 

 まさか、そこにいるとは思わないでしょう」

「質問に答えてくれる?」

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「私も、ライリーを愛してる。でも、私は、

 あなたとは違う。

 ライリーを解放してみせるわ」 

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ライリー編その4に続きます。

エブリスタで、小説も公開中。

ペンネームはmasamiです。

よろしくお願いします。