ふれあいママブログ

バービー人形大好きです。魅力を語らせて下さい。エブリスタ(estar.jp)で小説も公開中。ペンネームはmasamiです。大人も子供も楽しめる作品を、特に貧困や格差をテーマに書いてます。

あなたのバービーは何を語る?⑧後編


f:id:fureaimama:20211009173510j:image

「このドレスに着替えて、ジニー。

 つなぎ姿で、パーティーに潜り込むわけには

 いかないからね」

「持ってきてくれたんですか?わざわざ…」

「帽子以外は、楽なものだったよ。潰れていな

 ければ、いいんだけどね。女性の帽子だけは

 どうにも苦手だ」

「サンディは?」

「僕はこのままでいいんだよ。さ、早く」f:id:fureaimama:20211009112403j:image

f:id:fureaimama:20211009170823j:image

「どうですか?」

「美しいよ、ジニー。とても綺麗だね」

「自信ないですけど…」

「大丈夫だよ」

f:id:fureaimama:20211009114155j:image

f:id:fureaimama:20211009114217j:image

f:id:fureaimama:20211009114247j:image

「この生け垣を潜り抜ければ、そこがゴールだ

 ここまで来てバレたんじゃ、泣くに泣けない

 慎重にね、ジニー。覗いてみてごらん。

 辺りに人はいない?」

f:id:fureaimama:20211009170945j:image

f:id:fureaimama:20211009114602j:image

f:id:fureaimama:20211009114637j:image

f:id:fureaimama:20211009114654j:image

「誰もいません」

「よし、一気に向こう側に!」

f:id:fureaimama:20211009114839j:image
f:id:fureaimama:20211009115210j:image

「やったわ!でも…ここ、本当にパーティー

 会場なんですか、サンディ。美しい庭園です

 けれど、人もいないし、何もないわ」

「実はね、ジニー。ちょっとした嘘をついたん 

 だ。ここは、まだ会場ではない。

 パーティーは、ここから十分ほど歩いた所

 で開催しているよ」

「え?まだ、そんなに先?」

f:id:fureaimama:20211009173630j:image

f:id:fureaimama:20211009121038j:image

「じゃあ、サンディも早くこっちに来て」

「ここでお別れだよ、ジニー。僕は行かない」

「え?え?」

「もうしばらくすると、リンという子が現れる

 憶えているかな?遊園地で会った子だよ」

「ああ…赤毛の…とても綺麗な…」

f:id:fureaimama:20211009121429j:image

「リンが、全て説明してくれるから。

 じゃ、僕は帰る」

「そ、そんな…一緒に行ってくれるとばかり…」

「ジニー。よくお聞き。

 僕はね、今回、自分勝手に行動することにし

 たんだ。君がどう思うか、どう行動するのか

 知った事ではない。自分が良かれと思った事

 を独断で進め、後は放っておく」

f:id:fureaimama:20211009170727j:image

f:id:fureaimama:20211010061136j:image

「サンディ…そんな人じゃないでしょう…」

「ところが、今は、そんな人なんだ。

 後は好きにしたまえ。君の判断でね」

「どうしたらいいのか…わかりません…」

「とりあえず、リンと会ってみればいい。

 彼女に、この手紙を渡しておいてくれ。

 じゃあね」

「待って!行かないで!」

f:id:fureaimama:20211009171926j:image

f:id:fureaimama:20211009171949j:image

f:id:fureaimama:20211009172005j:image

「怖がるなんて、おかしいな、ジニー。

 これが世の中だよ。勝手にカードを配ってく

 る奴らばかりだ。

 君の周りにもいるだろう?

 それでいいんだ。

 カードを捨てるも、うまく使うも、君次第。

 自己責任になるんだ、よろしく」

「困るわ…サンディ…サンディ…」

「僕は困らない。さよなら」

「あっ…」

f:id:fureaimama:20211009172449j:image

f:id:fureaimama:20211010061402j:image

「勝手にカードを配る奴…?私の周りにも…?」

f:id:fureaimama:20211009172510j:image

f:id:fureaimama:20211009172529j:image

「ちょっと、ちょっと、ヤッホー!ジニーって

 いう子、ここに来てるう?」

「え?え?はいっ、ここです!」

「ここって、どこよう?」

f:id:fureaimama:20211009173345j:image

「こっちですっ」

「見えないわ、右?左?前なの、後ろなの?

 まさか、上?」

「そんなわけがないでしょう…」

f:id:fureaimama:20211009174120j:image

「こっちかな?」

「ちょ…どこに行ってますか!?逆です、

 そっちじゃありません!」

f:id:fureaimama:20211009174957j:image

f:id:fureaimama:20211009175022j:image

「ああ、そこだったのね!今すぐに行くわ。

 こちらから回り込めば…」

「方向音痴な方…」

「あれ?ジニーがいないわ!どこ?どこ?」

「ここにいます!どこをどう見たら、

 そっちの方角に進むんですか?」

f:id:fureaimama:20211009175411j:image

「文句言うなら、あなたから来てよ、ジニー」

「わかりました…動かないで下さいね!」

f:id:fureaimama:20211009174410j:image

f:id:fureaimama:20211009174429j:image

f:id:fureaimama:20211009174555j:image

「万歳!巡り会えたわね。ジニー、憶えてる?

 私、リンよ」

「あの…お久しぶりです…憶えてます」

f:id:fureaimama:20211009174801j:image

f:id:fureaimama:20211009174912j:image

「サンディから話は聞いてるわ。手紙、預かっ

 てるでしょ。頂戴」

「これかしら?」

「天下のサンディの署名入りか。全てのドアを

 開く鍵ね」

「サンディ…逃げちゃったんです」

「そりゃ、逃げるでしょうよ。社長に見つかっ 

 たら、大変だもの」

f:id:fureaimama:20211009180142j:image

f:id:fureaimama:20211009180303j:image

f:id:fureaimama:20211009180214j:image

「社長って…?」

「シェ・デュアンヌの社長。国内トップの

 モデル・エージェンシーなの。私も、そこの

 モデル」

「すごいですね」

f:id:fureaimama:20211009181628j:image

f:id:fureaimama:20211009194737j:image

「でもないわ。コネで入ったから。確かに私は

 完璧だけど、それだけでは入れないのよ」

「でも、どうしてサンディは、社長から逃げて

 いるんですか?」

f:id:fureaimama:20211009182032j:image

「歩きながら、話しましょ。

 なんでも以前、社長はサンディに助けられた

 事があったみたいで、恩を返したいみたい。

 ただ、どうかな…単にサンディに夢中になっ

 てるだけかも。あそこまで、ハンサムな人も

 そういないものね、フフフ。

 でも、サンディは、付きまとわれるのが、

 好きではないから」

「ああ…また、そのパターン…。社長さんも、

 サンディが嫌がっているのなら、止めればい

 いのに」

f:id:fureaimama:20211009182723j:image

f:id:fureaimama:20211009182740j:image

「あのねえ。サンディの欠点はね、人を必死に

 させすぎちゃう所なのよ。社長は、サンディ

 の為なら、どんな事でもするわ」

「ちょ…ちょっと待って下さい。そもそも、

 あなたが協力しているなら…パーティー

 主催者と仲がいいなら…サンディ、なぜ、

 わざわざ『もぐり』なんか?

 正面入り口で、あなたと私を引き合わせて、

 帰ってしまえば、それで済んだのに。

 あんなに苦労して、疲れて、汚れて、時間を

 かけて『もぐり』をする必要なんかなかった

 わ。なぜ…そんな事を?」

f:id:fureaimama:20211009195514j:image

「あなたを、よく知る時間が欲しかったのだと

 思うわ」

「それだけの為に…」

「サンディは、そういう人だから」

「…。」

f:id:fureaimama:20211009195906j:image

「ところで、あなた、仕事を探しているのよね

 モデルになってみない?」

「私なんて、無理ですよ。採用されません」

f:id:fureaimama:20211009183423j:image

「あなたは綺麗で、スタイルもいいわ。

 それに、サンディの紹介状があれば十分。

 トップ・モデルになれるわ」

「絶対に無理です。なんで、私が?」

「逆に、なんで、あなたじゃいけないのよ?

 いい?トップクラスのエージェンシーの社長

 が、売り出すと決めて本気を出せば、誰でも

 スターになれるのよ。もちろん、大変な仕事

 だし、厳しい訓練があるけれど」

f:id:fureaimama:20211009183927j:image

f:id:fureaimama:20211009183946j:image

「それは構いませんし…モデルのお仕事にも

 憧れます。でも…なんか…」

「社長から見れば、あなたは、大切なサンディ

 からの、大切な預かりものよ。厳しいお稽古

 はあっても、大事に扱ってくれるわ」f:id:fureaimama:20211010063312j:image

「でも、それは、サンディの力でしょう?

 私の実力じゃない。ズルみたいで…」

「ハハッ!ずいぶんエラソーね」

「そんなつもりじゃ…」

「実力うんぬん、言えるレベルだとでも?

 最初は、みんな、誰かの手助けや後押しから

 始めるのよ。サンディに巡り会えて、本当に

 ラッキーだった…そう感謝すればいいの」

f:id:fureaimama:20211009185115j:image

f:id:fureaimama:20211009185132j:image

「感謝って言えば…大変!」

「何よ?いきなり」

「私…サンディの連絡先を知らないんです。 

 どうやって、お礼を言えばいいのかしら。

 連絡先、教えて下さい」

f:id:fureaimama:20211009190315j:image

f:id:fureaimama:20211010063505j:image

「必要ないわ」

「でも…」

「もし、あなたと、これからも友達付き合いを

 したいと思っているのなら、サンディは、

 必ず、連絡先を教えたはずよ。うっかり忘れ

 るなんて、絶対にしない人だから」

f:id:fureaimama:20211009190850j:image

「私と会いたくないって事ですか…?」

「ま、そうでしょうね」

f:id:fureaimama:20211009191045j:image

「…。」

「…。」

f:id:fureaimama:20211009191150j:image

「私…お仕事、頑張ります。サンディが誇りに

 思えるような、そんなモデルになります。

 そうしたら、きっといつか、また会えます

 よね?」

「ええ。そう思うわ」

f:id:fureaimama:20211010063632j:image

「サンディと会う為に、私、努力します。

 リンさんも、力を貸して下さい」

「他の人の為かと思ったわ…」

「え?」

f:id:fureaimama:20211010063714j:image

「なんでもない。大丈夫よ。私に出来る事は、

 何でもして、あなたを助けるわ。

 私にとっても、あなたは、サンディからの

 大事な預かりものなのだから」

「サンディの欠点…わかります。

 もう、居てもたってもいられない気持ち」

「そのガッツで、明日からいきましょう」

f:id:fureaimama:20211009192142j:image

f:id:fureaimama:20211009192238j:image

f:id:fureaimama:20211009192343j:image

f:id:fureaimama:20211009192622j:image

f:id:fureaimama:20211009194253j:image

 

次は、バービー・シェモーナさんのお話です。

お楽しみに。

 

エブリスタで、小説も公開中。

ペンネームはmasamiです。

「いつもの帰り道」「ヘルズ・スクエアの

 子供たち」など。

覗いてみて下さいね。